この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。
住宅ローンを組んで不動産を購入する場合に、名義人を決める必要があります。妻が専業主婦の家庭は夫が名義人になります。しかし、最近は共働き世帯も増えてきおり、夫婦の収入を合わせてローンを組むこともあるかと思います。
色々と検討して決めたはずの名義人も、離婚などで家庭の状況が変われば名義変更を余儀なくされることがあるかもしれない。ただ、ローンを完済していれば良いですが、もしローンが残っている状態で離婚となった場合に名義変更は可能なのかどうかについて解説していきます。
単独名義と共有名義
単独名義
住宅の購入費用を一人で持つことを単独名義といいます。例として、妻が専業主婦で収入が無く、夫の収入だけで住宅ローンを組む場合は単独名義となります。単独名義は、万が一、名義人が亡くなってしまったり、高度障害になってしまったりしても「団体信用生命保険」によって配偶者が残りのローンを返済しなくて良いのです。
「団体信用生命保険」はローンを組む際に加入が条件となっています。
名義人に何かあっても、残された家族に借金がかからないのは安心です。そのため、夫婦いずれかの収入が十分であれば単独名義にされる家庭が多いようです。
出典:住宅金融支援機構HP
共有名義
共有名義は、夫婦の収入を合わせて住宅の購入費用を出すことです。例として、夫婦それぞれが別の住宅ローンを組むペアローンなどがあります。
共有名義は夫婦それぞれに対し、住宅ローン控除を適用することができます。住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んでマイホームを購入した人に対して所得税が減税される制度です。要するに、2人分の所得税を減税することが出来ることになります。
2人の収入を合わせるため、多額の借り入れができます。しかし、夫婦どちらか一方の収入が減ってしまったり、働けなくなったりした場合に返済が厳しくなる恐れがあるので、その点は注意が必要です。
出典:国税庁HP
住宅ローンが残った状態での名義変更は可能か?
名義変更は金融機関の許可をもらえれば可能です。しかし、この許可をもらうことが大変難しくなっているのが現状です。
住宅ローンは人の信用をもとに融資されている
住宅ローンを受けるには、「名義人が家に住んでいること」「ローンを返済する能力があること」が条件となります。金融機関は、名義人がこれら条件を満たしているかどうか審査(収入状況、勤め先、借金の有無など)して、問題なければ融資します。
審査に通った信用できる人に対して融資しているので、人が変わると契約時に「審査してAさんは信頼できるから貸して大丈夫!」と思ってお金を貸したのにかかわらず「全く知らないBさんにお金を貸す」ことになってしまい、審査した意味が無くなってしまいます。そのため、名義変更は難しくなっています。
住宅ローンを組む際は、名義変更ができないことを念頭に名義人を決めるようにしましょう。
どうしても名義変更が必要な場合は?
「どうしても名義変更ができないと困る!」という場合には住宅ローンの借り換えが方法として考えられます。
住宅ローンの借り換え
住宅ローンの借り換えとは、新たな金融機関で住宅ローンを組んで返済中のローンを完済する方法です。
例えば、夫名義でA銀行から住宅ローンを受けており、これを妻名義に変更したいがA銀行に断られてしまった。そこで、銀行Bで妻名義の新しい住宅ローンを組む場合は以下の手順となります。
1、 妻がB銀行で借り換えの手続きを行う。(審査に通ることが前提となります)
2、 夫名義で借りているA銀行に「一括繰り上げ返済」の申請を行う。
3、 1で融資されたお金でA銀行に残額を一括返済する。
4、 以降は、新しい借入先であるB銀行に返済する。
借り換えのメリット・デメリット
借り換えにはメリット・デメリットがあります。
メリット
現在組んでいる住宅ローンよりも低金利のローンを組むことができれば、総支払額を安くできる可能性があります。残りの返済期間が長いほど効果的です。
デメリット
手数料などの諸経費がかかります。諸経費は金融機関や契約内容によって変わりますが一般的に30~80万円の間で収まることが多いです。総支払額を安くすることは出来ますが、諸経費がかかることも考慮する必要があります。
借り換えにかかる期間
借り換えには事前審査から借り換え手続きが完了するまでおおよそ一ヶ月程度かかります。
離婚時の名義変更の注意点
残念ながら離婚となり名義変更が必要になった場合には、いくつか注意点があります。
1.単独名義と共有名義のどちらで契約しているのか
2. 離婚後は誰が住居に住み続けるのか
3.名義変更は離婚前後どちらにするべきかよって
それぞれ説明していきます。
単独名義で住宅ローンを組んでいる場合
名義人が住居に住み続けるか出ていくかによって対応方法が変わってきます。
以下、夫の単独名義で契約した場合を例に説明します。
① 名義人の夫が家に住み続ける場合
住宅ローンの名義人がそのまま住居に住み続けてローンの返済をするため、特に問題はありません。しかし、妻が連帯保証人になっている場合、夫が支払い困難になると妻へ請求がいってしまいます。連帯保証人から妻を外してもらえるかを金融機関に相談してみて、もし外せそうになければ、代わりの保証人を探したり、借り換えを検討したりする必要があります。
② 妻が家に住み続ける場合(名義人の夫が家を出ていく)
住宅ローンは前提として「名義人が家に住んでいる」必要があるので、夫が家を出てしまうと、前提が崩れて契約違反となってしまいます。契約違反となると、残りのローンの一括返済を求められる可能性があります。
正社員として働いているなど、安定した収入が妻にもあれば名義変更できる可能性もあります。しかし、名義変更が難しい場合は、ローンの返済が可能(例:家を出た夫が返済を続ける)であることを金融機関にしっかりと説明し、理解してもらうことで一括返済を避けることが出来るかもしれません。
出典:法務省HP
共有名義で住宅ローンを組んでいる場合
共有名義から(住居に住み続ける方の)単独名義に変更する必要があります。共有名義は夫婦の収入を合わせて融資を受けています。単独名義に変更すると2人で支払っていたものを1人で支払う必要があります。
収入が増えていれば問題ありませんが、そうでない場合は金融機関に「返済する能力がない」と判断され、審査が厳しくなる恐れがあるので注意が必要です。
名義変更をするタイミング
離婚前後どちらのタイミングで名義変更をするかで、贈与税を負担するかどうかの違いが出てくるため名義変更のタイミングは重要です。
離婚する前に名義変更した場合
離婚届を提出する前に名義変更をすると贈与税を負担することになります。贈与税とは個人から一定額(基礎控除額110万円)以上の財産をもらった場合にかかる税金です。詳細は国税庁HPの「No.4402 贈与税がかかる場合」をご参照ください。
ただし、結婚後20年以上経過している場合は特例で基礎控除額110万円の他に配偶者控除として最高で2000万円控除されます。こちらも詳細は国税庁HPの「No.4452夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」をご参照下さい。
なお、離婚に限らず、何かしらの事情があり夫婦間で名義変更をした場合にも贈与税がかかる可能性はあるため注意が必要です。
離婚した後に名義変更した場合
財産分与という形になり贈与税はかかりません。そのため、一般的に離婚届を提出した後に名義変更をするケースが多いようです。
まとめ
1. 住宅ローンの名義変更は原則できない
2.どうしても名義変更が必要な場合は借り換えを検討
3.単独名義での契約時に離婚した場合に、名義人が家を出ていく時は要注意
4.離婚前に名義変更すると贈与税を負担する必要性が出てくる
この4点を頭に入れて、スムーズかつより良い形で対応できればと思います。
出典・引用:国税庁HP
出典・引用:法務省HP
出典・引用:住宅金融支援機構HP
コメント
この記事へのコメントはありません。